FX取引の世界には「アストロロジー(金融占星術)」と呼ばれる手法が存在します。これは、天体の動き、特に月の満ち欠けや惑星の位置関係を相場分析に取り入れる手法です。
日本ではこのようなトレード手法を懐疑的に見る投資家もいますが、欧米では一定のアストロロジーの法則を意識して売買を行っているプロの機関投資家も存在します。
今回は、その中でも地球に最も近い月の「満月」と「新月」にフォーカスしたトレードについて、科学的な検証結果も含めて詳しく見ていきましょう。
アストロロジーは欧米を中心に根強く存在する
金融市場の周期や相場サイクルに、占星術を導入し、売買に役立てようとする動きは、欧米を中心にして根強く存在しています。
アストロロジーを意識したFX取引の世界では、レイモンド・メリマン氏という著名なアナリストがいます。メリマン氏は「MMAサイクルズ・レポート」を発行し、金融占星術の第一人者として知られています。2025年10月現在も、投資日報社を通じて日本語版のレポートや予測本『フォーキャスト2025』が発行されており、日本でも一定の支持を集めています。
月の満ち欠けと相場の関係:科学的研究の現状
学術研究による検証
月の満ち欠けと金融市場の関係については、複数の学術研究が行われています。
2006年にYuan, Zheng, Zhuによって発表された研究「Are investors moonstruck?」では、48カ国の株式市場データを分析し、満月前後で株価リターンが低下する傾向が統計的に確認されました。この研究は519回も引用される影響力のある論文となっています。
2024年の最新研究「Bearish New Moon and Bullish Full Moon」では、金価格の動きを分析し、新月期に弱気傾向、満月期に強気傾向が見られることが報告されています。
ただし、2024年の統計的調査では、「月の相と金融市場の間に統計的有意性が乏しく、相関は偶然である可能性が高い」という結論も出されています。つまり、科学的には明確な因果関係は確立されていないというのが現状です。
心理的要因としての可能性
科学的に因果関係が証明されていないものの、多くのトレーダーが月の満ち欠けを意識することで、自己実現的に相場が動く可能性は否定できません。
つまり、「満月だから相場が変動する」のではなく、「満月だから相場が変動すると多くの人が考え、その結果として実際に相場が動く」という心理的メカニズムが働いている可能性があります。
「満月」と「新月」の動きに注目
月と為替(または株式)相場との関係において、よく言われているのが、「満月」「新月」といった特定の日が、相場の大きな変動に繋がりやすいということです。
一般的に言われている傾向は以下の通りです:
- 新月から満月に向かう期間:円高に向かいやすい
- 満月から新月に向かう期間:円安に向かいやすい
ただし、この傾向についても統計的な有意性は確認されておらず、あくまで経験則として語られているものです。
月の引力と人間への影響
満月の夜に変身する狼男の伝説がありますが、実際に満月と人間の行動の関係について科学的研究が行われています。
出産と満月の関係については、人間に関する大規模調査では否定的な結果が多いものの、2016年に東京大学の研究グループがウシの出産データを分析した結果、満月前後の3日間で出産数が有意に増加することが確認されました。ただし、人間の出産については、2025年時点でも科学的な相関関係は明確には証明されていません。
月の引力は海面を数メートルも変化させる力があります。人間の体の大部分が水分で構成されていることを考えると、何らかの影響を受けている可能性は完全には否定できません。
歴史的事件と月の満ち欠け
本能寺の変と新月
元記事では「織田信長が明智光秀によって討たれたとされる、本能寺の変は新月であった」と記載されています。これは事実です。
天正10年6月2日(ユリウス暦1582年6月21日)の本能寺の変が起きた日は、確かに新月でした。月齢計算によると、月齢0の新月だったことが確認されています。明智光秀にとって、月明かりのない新月の夜は、奇襲攻撃に好都合だったと考えられます。
ブラックマンデーと惑星直列の検証
元記事では「1987年の10月に起きたブラックマンデーの大暴落は太陽系の惑星直列が起きた年と一致する」と記載されています。
しかし、調査の結果、1987年に惑星直列は発生していません。いわゆる「惑星直列」が話題になったのは1982年で、ブラックマンデーが発生した1987年とは5年のずれがあります。
ブラックマンデー(1987年10月19日)の原因については、プログラム売買の暴走、貿易赤字への懸念、金利上昇などの経済的要因が主な原因とされており、天体現象との関連性は科学的に確認されていません。
確率が7割以上なら検討する価値あり
そもそもFX取引は、相場が上がるにせよ下がるにせよ、その確率は理論上50パーセントです。
もし「満月」や「新月」にフォーカスした取引の勝率が、統計的に50パーセントを有意に上回る70パーセントや80パーセントほど確認されているのであれば、アストロロジーに基づいた戦略を試してみる価値はあるでしょう。
ただし、ドル円以外の通貨ペアごとに「満月」や「新月」で相場がどう動くかということまで、十分なデータで検証しているサイトはほぼ存在しないのが現状です。
もし試してみたい場合は、情報も多いドル円もしくは、ドル円との相関性が強い通貨ペアを選択されることをおすすめします。
ドル円とアストロロジーの関係性
アストロロジーの法則を取り入れた、ドル円の取引にあたっては、「新月」から「満月」に向かう日柄でドル円が円高方向に向かっているかどうかを確認しておくべきでしょう。
「満月」の当日のみ円高になると考えるのは短絡的と言えますので、この間の動きというものをチェックしてみることをおすすめします。
「新月」から「満月」までの日数は毎回変化し、13.8日から15.8日となります。この幅が生じるのは月の軌道自体が楕円を描いており、地球から離れているときには公転が遅く、逆に近づくと早くなることが関係しています。
この期間のドル円の動きは毎回同じとは限らないことも理解しておく必要があるでしょう。
毎回利用できるかどうかは分かりませんが、満月や新月の前後に意識して取引してみることにより、意外にも役に立つ場面があるかもしれません。
まとめ:心理的要因が取引市場に影響を与える可能性
アストロロジーに限らず、多くの法則には「人の考えから、実際の動きに影響を与える」相関性があります。この考えは、FXのテクニカル分析の基本にも通じる部分があるでしょう。
2025年10月時点での科学的見解:
- 月の満ち欠けと金融市場の因果関係は科学的に確立されていない
- 一部の研究で統計的相関が報告されているが、再現性や普遍性は不十分
- 多くの投資家が意識することで自己実現的に相場が動く可能性はある
- 心理的・行動経済学的な観点からの影響は研究の余地がある
アストロロジーは非科学的だと思われることもあります。しかし、グローバルなFX市場では、意外にも多くの人に信じられているということを念頭に、判断材料の1つとして覚えておくとよいでしょう。
ただし、アストロロジーのみに頼るのではなく、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析と組み合わせた総合的な判断が重要です。
参考情報:
- 学術論文「Are investors moonstruck?」Yuan, Zheng, Zhu (2006)
- 東京大学研究「満月が近づくと出産数が増える~ウシの研究により変化が明らかに~」(2016)
- 投資日報社「フォーキャスト2025」レイモンド・メリマン著

